2008年11月15日(土)「しんぶん赤旗」
直接契約で保育ピンチ
公的制度守れ 緊急シンポ
政府が保育に利用者と事業者との直接契約制度を導入し、公的責任を大きく後退させることを検討しているなか、緊急シンポジウム「制度『改革』は、保育に何をもたらすか」が十四日、都内で開かれました。
保育研究所の逆井直紀氏が、厚生労働省の審議会での議論の動向を報告。「年内に強引に結論をまとめようとしているが、まだ社会的にほとんど知られていない。運動は正念場だ」と述べました。
鹿児島大の伊藤周平教授は、制度改変の先行例である介護保険の実態から問題点を指摘。「直接契約は結局は自己責任で、事故が起きようが質が悪かろうが行政は責任を持たない。保育料は応益負担となり、滞納しそうな家の子は入所できないことも起こりうる。今でも無保険の子どもが三万人など子どもの貧困が問題になっているのに、これ以上、子どもの世界に経済力による差別を持ち込んでいいのか」と告発しました。
帝京大の村山祐一教授は「一九七〇年代には毎年七百カ所ずつ保育所が増設されたが、ここ数年は年九十カ所ほどだ。子どもにお金をかけない“子育て後進国”から脱却し、現行制度のもとで保育にもっとお金を投入すれば、待機児の解消は可能だ」と述べました。
現役の保育園保護者でジャーナリストの猪熊弘子さんは、設置主体の企業が経営破たんし突然閉鎖された神奈川県川崎市の認可保育所ハッピースマイル上小田中園を取材した体験を紹介。「閉園時、職員は三人しか残っておらず、給食も十月から止まっているなど、とても認可園とは思えない実態だった。営利企業に保育を委ねる規制緩和路線は、子育ての安心感を崩す」と述べ、現行制度を守り抜こうと訴えました。